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森山愛子の歌謡劇場  十九の春

森山愛子の歌謡劇場 十九の春
家臣の虫歯を麻酔なしで抜くなんて乱暴すぎるわよ。ピュートルくん。
早く、こっち、こっちに来なさい。
お前は誰だ。
東洋人。そうだ、お前は中国人だろう。
いいえ、あなたは初めて見たかも知れない、日本人、演歌歌手もやっているのよ。
ちくしょう、銃砲隊の奴ら、絶対、許さないからな。
僕、僕、こっちに来なさい。私がピュートルくんと会ったのは、ピュートルくんが十才のときでした。
母の異なるイワンとその姉ソフィアが王位を巡ってピュートルくんの命を狙っていたのでした。
ソフィアの親戚のミロランスフキー家に煽動されたストレリッの蜂起でピュートルくんは命を落とすことところでした。
そのとき、銃砲隊がピュートルに銃を向けた。森山愛子は流線型の道具をだすと、その先端から稲妻がいくつも走って、何十人もの銃砲隊が倒れた。
死んだのかい。
いえ、気絶しているだけ。
お姉さん、命を助けてくれてありがとう。でも、どこからここに来たんだい。僕が親政をはじめたら、
あなたを妃にしてあげよう。少し、年上だけど。
年上だけ余計よ。またね。
どこへ行くんだい。

私がピュートルくんに二度目に会ったのは
ピュートルくんは王位継承騒動を逃れるためにレニングラードを離れてドイツ居留地で戦争ごっこに明け暮れていましたが、やがて王位に就きました。
ピュートルくんは外国の先進知識を取り入れるために自分の身分を隠して船大工になりました。
ここにロシアの皇帝がいるぞ。
あやうくピュートルくんの身分がばれて、危ない状態になったとき、私が会いに行ったときでした。
私の名前は演歌歌手の森山愛子、ここにいるのはギターの伴奏者、ピュートルくんは危うく難をのがれました。
前に会ったときと あなたは少しも変わらない。今日こそ、あなたを妃として迎えよう。
どこに行ったんだ。愛子。
私はまた消えました。

愛子、愛子、ピュートルが大変なことになっているぞ。
私がピュートルくんのところへ行くとピュートルくんはベットに伏せっていました。
彼はネヴァ川河口の砂州に乗り上げた船の救出作業に参加して真冬の海に入って以降、
体調を崩し、死期を迎えようとしていたのです。
愛子、あなたは少しも変わらない 。初めてあなたに会った時から、私はあなたを妃にしようと思っていた。
私たち、エンカ星人は千年の命をもっています。 
私の命をあなたに・・・・
ピュートル大帝、いや、ピュートルくんは私の腕の中で息をひきとりました。


森山愛子の歌謡劇場  チャッカマン

301
愛子の歌謡劇場    ヤットン節 チャッカマン
忍法解説。
忍法猫パッチン。
術者は猫の胴体にゴム紐を付けて、鎖分銅のように回す、すると頭に猫が飛び乗り、相手の首をしめて殺す。
この術をつかう女忍者がいた。くのいち愛子。その猫の名前は愛愛。賞金稼ぎである。くのいち愛子は大目付に秘密の場所に呼び出された。
妖術使いの妖僧が将軍にとりいって御政道を乱しておる。大目付がくのいち愛子に妖僧を忍術猫パッチで始末するように依頼した。
秘技、猫パッチンの猫を連れて、江戸城の奥深く、入っていった。くのいち愛子は松の幹の影に隠れた。いたいた。聞きしに勝る怪異な容貌をしている。妖僧は縁側で爪を切っていた。猫をぶんまわし、妖僧脳内に猫、愛愛を投げつけようとすると、にやあおおん。どこからか鋏が現れて、猫は空中高く舞い上がった。
しっ、くのいち愛子は声を出さないように、口を押さえられた。
逃げるんだ。
闇夜に見える姿は甘い顔をしたいけすかない二枚目だった。
何すんのよ( `Å´)
何とか 江戸城を抜け出した愛子の前にはいけすかない二枚目が立っていた。
女忍者、猫パッチンがきくと思っているのか?
ふざけないで、猫パッチンは必殺技よ。それより、あんたの名前は?
田口順之助。男は上から目線で答えた。
ふ、ふ、ふ、ふ
そう思うなら、女忍者。その必殺技を俺にかけてみろ。
何て小生意気な男なの。
私は手加減はしないわよ
猫パッチン。(ーё一)
愛愛は飛んでいき、田口順之助の頭に乗っかった。しかし田口順之助は身動きもしなかった。
こう見えても猫の愛愛は寝技、世界一よ。
このにやけた男をしめおとしておしまい。
にやああああ
愛愛は前足を組んで田口順之助の首をしめるが田口順之助は笑っているだけだ。
ふはははは。笑い声だけは豪快だった。猫パッチン、破れたり。
きゃーーあああ。
田口順之助の頭は地面に落ちた。
そして、なんということだろう。(ーё一)
頭がまた、にょきにょきはえてきたのだった。
これこそ秘技猫パッチン破り。
女忍者、今日はさらばじゃ。
田口順之助は満月の中に消えていった。
妖僧脳内も首にょきにょきの技をつかえるぞ。助けてくれてありがとうと言ってもらいたかったな。( ´∀`)は。はははは。
https://www.youtube.com/watch?v=09ejuo5sLRY
滝行じゃ。
どこからか、声が聞こえたような気がしました。そうだ、滝行をしよう。
くのいち愛子が育った忍者の里にはくのいち愛子のおじいちゃんも住んでいて、
くのいち愛子はおじいちゃんの顔が思い浮かんだ。
白装束に身をまとった愛子は思いきって滝壺の中に飛び込んだ。(ーё一)
いやーん、冷たい。身体をよじると、
あれ、くのいち愛子が岩の方を見ると愛愛が同じように身をよじっている。
これは、もしかしたら、おじちゃんが言っていた
高等忍術、ペット一心同体。遠隔操作で動物を殺人ロボットにかえることができるわざ。
これで賞金稼ぎがやりやすくなる。
愛愛に刀をもたせると愛子が思ったように刀をうごかしている。
やったあああ。
なに、猫と遊んでいるんだよ。
あんた。
また、あんたなの。
愛子は木の枝の上で頬ずえをつきながら自分の方を見ている田口順之助の方を見ながら、べっかんこーをした。
田口順之助は木の上であぐらをかいた。
きみにいい情報を教えてあげようと思って来たんだぜ。妖僧脳内、週に一度、江戸城の外に出てお楽しみだ。
・・・・・
愛子と愛愛は江戸の庶民が入れないような寺にいた。青い空の上に満月が輝いている。あの得体の知れない男、田口順之助のはなしでは妖僧脳内は寺のなかで美女を集めて乱こうパーティーをやると言う。
妖僧脳内は不思議な油を使って、怪異な容貌のくせに美女をその気にさせるという。
ペット一心同体の技を身につけた今、私には敵はいない。
脳内の首はとったは。
さあ、行くわよ。愛愛。にゃあ。
巨大な豚のような肉の固まり、白いなまめかしい裸体が絡んでいる。
小さな刀を持った猫が妖僧脳内の首をとりにいった。
にゃあにゃあ、愛子は遠隔操縦で猫を操った。そのとき部屋の片隅にいた黒い影が急に愛子の方に向かってきた。それは女だった。しかし背中には蝙蝠の羽根がはえている。こうもり女は美女の身体に魔方の油を塗ることのほかに妖僧脳内のボディーガードも勤めている、身体には黒い革の水着を着ている。くのいち愛子の計算違いだった。敵がふたりもいるなんて。その時、大きな音がして部屋の壁に穴があき、砲弾のようなものが頭をだし、そのなかから声が聞こえた。さあ、ここにはいるんだ。愛愛と愛子がそのなかに入るとどんどん、空に上がっていった。
その砲弾は巨大な凧につながっている。
愛子はそれが田口順之助だということはわかったが、その姿はぼんやりとしている。身体がほてってくる。
自分の意思に反して田口順之助を求めてしまう。
ばか、眼をさませ。
愛子は自分でも自分が誰かわからない気がした。身体の中がむずむずして田口順之助にキッスをしたくなる。潤んだ目で田口順之助を見てしまう。順之助えええ。すると突然、この得体の知れない男の手が伸びて愛子の太ももに触れた。
いやーん、なに、するのよ。
ばか、恥ずかしがっている場合か。
愛子は人差し指を自分の唇に当てた。
田口順之助の手にはものを拡大してみるための大きな虫眼鏡が握られている。
田口淳之介は愛子のふとももをじっと大きな虫眼鏡で見つめた。
やっぱりそうだ。君の身体は魔法の油の毒牙におかされている。
田口順之助はくのいち愛子に覆い被さると太ももを吸った。
もう大丈夫だ。僕は君の命の恩人だよ。君は色きちがいになって狂い死ぬするところだったんだぜ。
にゃあ、愛愛が鳴き声をたてたが愛子は何がなんだかわからなかった。愛子が愛愛の方をみると愛愛はエメラルド色の綺麗な球で遊んでいる。
これは!
君の相棒はいいもの持ってきたよ。
君が飼っている猫のお手柄だ。これは非常に価値のあるものだ。
どの位の価値なの。
妖怪脳内の首をとったら大目付にいくらくれると言われた。
このくらい。
愛子は指で金額を示した。
その三倍はある。
へへへへへ。いいこと聞いちゃった。
二人が大凧につるされたロケットから降りてくると江戸の街は夜が明けていた。
女忍者、僕は妖僧脳内の様子を伺ってくるから。
あなたは敵なの、見方なの。
ふふふふ。
田口淳之介は謎の微笑みを残したまま江戸の街に消えて行った。
いいことを聞いちゃった。
くのいち愛子は盗品の宝石を買ってくれる南蛮人の商人を知っていた。
行くっきゃない。危ない目に会うよりも簡単に大金が入るわよ。
魔法のやかたのような家の中に入っていくとおかまの宝石商人が待っていた。。
どれどれ見せて頂戴。
おっ、これはどこから盗んできたんだい。ふふふふ、へへへ。
私がお前の知り合いだとでも思っていたのかい。
あんたは
仮面を脱ぐと、そこには妖僧脳内がいた。
妖僧脳内は気持ちの悪いぬるぬるした怪獣に変わると愛子に襲い掛かった。
こんなことだと思ったよ。
女忍者その球を上にあげるんだ。
愛子の上げた球を田口順之助は不思議な拳銃で撃ち抜くと七色の粉に変わって妖僧脳内は綺麗な小さなカエルに変わった。
ポケモン一匹、ゲット。
あんたは。
そう、ポケモンゲッター。
愛子のいる忍者の里の上の方にポケモンゲッターの里があった。
彼らは不思議なポケモンをつかまえると
南蛮人に売るという、実入りのいい商売をしていた。
おじいちゃはいつもポケモンゲッタ-は人間の屑だと言っていた。
ポケモン、ありがとう。また田口順之助は大凧にのり込んだ。
空にするすると上がって行く。
ちょっと、ちょっと、あんた、待ちなさいよ。
女忍者じゃない。私には森山愛子って言うちゃんとした名前があるんだからね。
https://youtu.be/l195YanxeqI



森山愛子の歌謡劇場  国際線待合室

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森山愛子の歌謡劇場 国際線待合室
どこにでもあるようなクリ-ニング屋の二階にSPPシ-クレットピ-スプロダクトの日本支部があった。
日本支部長の丹波哲郎はふたりの部下、草なぎ剛と春香クリスティ-ンを前にして言った。
マッドMOが日本に来ている。
草なぎ剛の顔は引きつった。
マッドMOは漫画で言えばゴルゴ13のような存在だ。
殺しの依頼をしくじったことはない。しかし、誰もマッドMOの実態を知らなかった。
一体、何の目的で。
日光中禅寺湖の湖畔に湖畔邸病院があるのを知っているか?
そこに政府の肝いりで匿われている***氏がいる。
今度のアメリカと中国の密約の立役者だ。
彼が暗殺されれば深刻な事態が生じる。
***氏を守れと。
沈黙が生じた。
二人はその仕事があまりにも困難を極めていることを知っているからだった。
心配するな。アメリカ本部から MAKがすでに日本にもぐり込んでいる。
MAKが
草なぎ剛の顔はバラ色に輝いた。
MAKは草なぎくんにとっては憧れの人だからね。
春香クリスティ-ンが軽い嫉妬をまじわせて言った。MAKはSPPの伝説の人である。
しかし その実態はマッドMOと同じように誰も知らなかった
草なぎ剛春香クリスティーンが湖畔亭病院に着くと、白衣を着た看護婦が待っていた。
血液がたりません。あなたの血液型は?
草なぎ剛は、何故か、胸の高鳴りを覚えた。その看護婦を遠い昔から知っているような気がしたからである。
胸にはネームバッチがついていて、森山と書かれていた。
あんた、なに、見とれているのよ。
私たちの身分証明書に血液型が書かれているじゃん。
春香クリスティーン草なぎ剛を激しく叱責した。しぶしぶ身分証明書をとりだした草なぎ剛は森山という看護婦に強く袖を引っ張られた。
Rhマイナス 、あなたの血をください。お連れの方もついて来てよろしいですよ。
いいですか。さしますよ。
血、採られちゃった。

お前、なに、でれでれ、してんだよ。春香クリスティーンは草なぎの頬を五六発叩いた。
警護の依頼をされた***氏は病室にはいず、湖を望む美しい西洋庭園で朝のお茶を楽しむ時間だという。
お茶とケーキを運ぶ係のあとをついていけば***氏のところへ行けるというので、係のところへ向かおうとすると目に見えない影がケーキと紅茶載せたワゴンの前を通りすぎたような気がしたが、ふたりは目の錯覚だと思った。
***氏は偽装の病人だったからピンピンしていた。
君たちがSPPから派遣された諜報部員かい。
***氏が紅茶茶碗を口に運ぼうとしたとき茶碗と***氏の頭が吹き飛んだ。
何をするんだ。
ふたりが振り向くとライフルを構えた、あの看護婦が立っていた。
チキショー、チキショー。
草なぎ剛が泣きながら森山という名札の看護婦の方に向かっていくと、
空から縄梯子がするすると降りて来て、その看護婦はヘリコプターの中に消えていった。
チキショー、チキショー、お前が殺人者、マッドMOなのか。森山さぁぁん。
森山さぁぁん。は余計なのよ。
春香クリスティーン草なぎ剛の頭をぺちと叩いた。
なんだ、これ。
ふたりの足元にトランプが1枚、落ちている。
ダイヤのエースには書かれていた。 誰が味方なのか、敵なのか、ははーん。
なんだ、これは。
森山さぁぁん。
それが余計なのよ。春香クリスティーン草なぎ剛の頭をまたぺちっと叩いた。
********
残念なことに***氏は殺された。SPP日本支部長、丹波哲郎は眉ねをひそめてふたりの諜報部員たちを眺めながら言った。
しかし、喜ばしいことがある。この暗殺により、マッドMOの行動の軌跡がぼんやりと掴めるかも知れないということだ。
支部長、何故、二発の銃弾が撃たれたのですか?あの看護婦がマッドMOなんでしょうか?
うちの知り得た情報では、
あの看護婦の名前は森山愛子、看護婦のかたわらに演歌歌手もやっている。
彼女がマッドMOだなんて、殺人鬼だなんて。
おーーーい、草なぎ、何をぼんやりしてるんだ。
本当 、馬鹿みたい。草なぎくん、あの看護婦に血を抜かれてから少し、変よ。春香クリスティーン草なぎ剛の袖を引っ張った。
マッドMOは日本に来てから、ここに寄っている。
草なぎ剛春香クリスティーン動物愛護団体の小さな建物を尋ねた。
そこで得た情報によると確かに変わった人物が来たが、用件は忘れてしまったということだった。
おっ、あれは。
草なぎ剛はあの女性を見つけた。
春香クリスティーンに知られないように、その車に近づいた。
あなたはマッドMOなのですか?
その問いには答えず車はものすごい勢いで走り出した。
******
ちょうどその頃SPP日本支部の丹波哲郎にシカゴにある本部から電話がかかってきた。
なるほど、そうですか。ジェローム・レバンナ博士の消息はわかりましたか。
信じられないが事実なんですね。
その夜
丹波哲郎はふたりに召集をかけた。
三ミリの装甲鉄板に武装されたリムジンに乗り込んだ三人は夜の東京を羽田空港にむかった。
草なぎくんはあの森山という看護婦がマッドMOで***氏を殺したんじゃないかと思って悩んじゃているんです。
リムジンのハンドルを握っまま前を向いている丹波哲郎はふたりの顔も見なかった。
なんで 悩む必要がある。
やがて、夜の闇にクラゲのように光る羽田空港の前に止まった。
その前には動物病院の車が停まっていた。
あれだ。
 三人はマシンガンを持つとその車に近づいた。すると、向こうからマシンガンの銃声が響いた。
信じられないことに、金色の小さい猿がマシンガンを持って立っている。
猿のほうが身のこなしが軽いので、三人は車の影に隠れるほかしかなかった。
屋根の方から、声が聞こえた。
あんたの最後よ。マッドMO。
そこにはあの看護婦が立っていた。
金色の小さな猿はMAKのライフルに頭を撃ち抜かれて倒れた。
紅茶茶碗を撃ったのはMAK
、つまり森山愛子だった。
紅茶茶碗に毒が入っていたからだ。頭を打ち抜いて殺したのはマッドMOだった。
マッドMO,それは極度に発達した医学が生んだ悪魔だった。
猿の中に人間の人格を移植した悪魔だった。
MAKの正体がわかった今、森山愛子は日本にはいられなかった。
敵なのか、味方なのか。
私のこと、嫌い、好きって聞いてきたのよ。
春香クリスティーンは隣にいる草なぎ剛に声をかけた。
MAK、こと森山愛子をのせた飛行機はテールランプの赤い光を夜の闇に残しながら飛び立っていった。

森山愛子の歌謡劇場  王将

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演歌歌手を目指して上京した森山愛子は安アパートから電車に乗りかえて週に四日間、閑静な住宅街の中にある喫茶店でウエートレスのアルバイトをしながら生活費のたしにしなければならなかった。

大きな家がたくさんあって、そこには大企業の会長だとか、政治家なんかが住んでいた。蝉の鳴き声が沢山聞こえ、暑い日だったので木の沢山はえている木陰のベンチで公園の売店で買ったアイスキャンディーをなめていると、少し離れた向こう側のベンチで寝ている汚ない格好をした老人が森山愛子がアイスキャンディーをペロペロ舐めている姿をじっと見つめている。

キモい。森山愛子から二メートルも離れていない。変質者に違いない。

アイス、アイス、死ぬうううう。

老人は死んでしまったようだった。

こじきのおじいちゃん、死んじゃったの。愛子が爺の顔をのぞきこむと、またアイスくれぇ。

キモい。何でこんな、高級な住宅街にこじきが住んでいるのよ。まぁ、いいわ。この食いかけのアイスでも、この爺の口に突っ込んでおくか。

くるじい。じじいは呻いた。

あっち、あっち

売店の方を指差している。

なんて厚かましいじじいなの。

森山愛子はカバンの中にあった食いかけのたいやきをじじいの口の中に突っ込むと、そのばを離れた。

森山愛子が安アパートに戻ると、下宿のおばさんが顔を出した。

愛子ちゃん、福山雅治のサインを早く、頂戴な。

今度もらってくるから。

しかし、それは不可能な話しだった。

愛子はいろいろな番組にでる予定だと嘘に嘘を重ねていた。

愛子が見た芸能人といえばエスパー伊東だけだった。

福山雅治なんて、愛子にとって星の世界の住人だった。

愛子ちゃん、事務所の****さんがきているよ。

二階にあがると、事務所の****が座布団の上に座っている。

いい知らせだど。うちの社長の知り合いが西條八十先生を知っているんだ。

森山愛子はその名前を中学校の教科書でしか、知らなかった。

有名な作詞家の家へ事務所の人がつれて行くという。

あれぇ、あれぇ、愛子は驚いた。いつも通勤に使っている、電車に乗って、就いた場所はあの高級な住宅街だった。

そしてついた家は京都にあるような銀閣寺みたいな家だった。

中から和服を着た上品な婦人がいて、奥の部屋に通された。

障子が開き、

あれえええ、

出てきたのは、あの小汚いじじいだった。今は綺麗な着物を着て、髪もなでつけている。

そう言えば、音楽の教科書でその顔を見たことがある。

まあ、すわりなさい。

愛子はまだテレビに出たことはなく、下宿のおばさんに嘘をつき重ねていること、就職の相談会に母親といつしょにいったとき、担任に笑われたこと、パンの耳を食べていること、母親を喜ばせたいこと、

などを切々と訴えた。

この高名な詩人は黙って目を閉じた。

それもまた彼が若い頃に経験したことだったからだ。

老詩人は森山愛子を見つめた。

そして彼は微笑んだ。


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